国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
王宮は、すでにマルスを傀儡としてアニウスが政治的権力を握っている。
しかし、ウェスタ神殿の権力は治外法権だ。
そもそもアニウスが、政治的権力を握るようになったのは、
アニウスの妹であるヴェローナが、神官時代に前王に見初められて、妾妃になったからだった。
前王は、政には興味が薄かったため、アニウスが相談役として権力を伸ばした。
しかし、現在の神官長であるウルウが5年前にその座についてからは、
アニウスの政敵であるウルウの父が、王宮での発言力を強めていた。
それに対して、アニウスは、ヴェローナ亡き後、失踪した前王に代わり、
ヴェローナの産んだ子供、マルスの後見として政を行い、権力を貪ってきた--。
ウルウももう年だ。任期の30年は、来年に迫っている。アニウスは、なんとしても娘のシギネアを次の神官長につけるつもりでいた。
しかし--。
「シギネア。お前をマルス王の妃にしようと思っているのだ」
「あら、わかってるわ。
私が次の神官長になって、次代の神官長をお父様の息のかかった人間に継がせたら、
神官長の座を退いて、王妃になるのでしょ?
マルス様の母君である、ヴェローナ叔母上様のように」