国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
それは、アニウスの当初の計画であった。
ウェスタ神殿の権力も手に入れて、なおかつ娘を王妃に据える。
これで、アニウスの権勢は、確実なものになるはずだ。
マルスは、そろそろ正室を迎え入れる年頃であるため、アニウスにも少しばかりの焦りはあった。
しかし、本人は遊び呆けて暮らしており、結婚にはまるで興味を示さない。
我こそは、と多くの縁談が持ち上がり、そして消えていった。
もしも、マルスがその気になれば、アニウスが邪魔をしたのだろうが、
そのどれもをマルスは適当に受け流し、決して首を縦には振らなかった。
「状況が変わったのだ。シギネア。お前にはいますぐに王妃になってもらう」
「今すぐって、神官長の座はどうするの?」
「それは、これからまた考える。他にも私が目をかけている神官はおるしな。
それよりも、王を御するのが先なのだ」
アニウスは、声を抑えながら、シギネアに耳打ちした。
「王が政に興味を持ち始めたのだ。このままでは困ったことになる。
お前の魅力で、王を虜にしてしまえば、またもとのように堕落した生活を送るだろう」
「まぁ、お父様ったら」
シギネアは唇を吊り上げて、薄く笑んだ。