国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
暑さを少しでもしのげるようにと、王の居室には、水を張った桶が置かれていた。
足首までをその中につけ、マルスは机の上にうつぶせになり、スースーと寝息を立てている。
今まで政に興味がなかったマルスは、このところ朝から晩まで、口答官を呼んで勉強していた。
領地の見回りも積極的に行い、民の暮らしぶりも細かく観察して。
今朝も早くから勉強して重臣会議を終えた後、マルスは眠気に勝てず、うつらうつらしながら、
今度は昼の食事を抜いてみようかなどと考えていた。一日に二度しか食事をしない、庶民と同じように・・。
部屋の外では、マルスを訪ねたディスコルディアが、部屋に入れず、立ち往生していた。
「どうしてお兄様にとりついでくれないの?」
「王は、今、疲れてお休み中ですので。もうしばらく後でお越しください」
「かまわないわ。私一人で入るから」
ディスコルディアは、とめる間もなく、風のように室内に入った。
「ディスコルディア様!」
侍女の声が背中にかかるが、ディスコルディアは無視した。
自分は特別なのだ。勝手に部屋に入ったところで、マルスが怒ることはないだろう。
・・驚くかしら?
ディスコルディアは、目覚めたマルスが、目を丸くして自分を見つめるのを想像して、
くすりと笑った。