国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
ウェスタの隣国、チェルシーから東へ船で半日ほどの海上で、ひげを生やした薄汚い男が、
まもなく上陸するチェルシーの岬をぼんやりと眺めていた。
そのごつごつと荒れた左手には酒瓶を持ち、水代わりと言わんばかりに酒を喉に流し込んでいる。
金色の髪の毛は、長い航海で、潮風と日光にさらされていたのだろうか。
ひどく痛んで縮れており、砂と土にまみれて、元の色がわからないほどに薄汚れていた。
一見すると、ただの奴隷のようにも見えるが、男の青い瞳だけは、
野生の獣のように、ぎらぎらと恐ろしい光を放っており、只者ではない予感をにおわせる。
「よう、ロカ。あんた、確かウェスタに向かってんだよな?」
ロカと呼ばれた男は、左手の酒瓶を高く突き上げて、是の意味を示した。
「やめといたほうがいいぜ。チェルシーでとどまっとけよ」
船の主らしいその男は、ロカの隣にどっかと腰をおろすと、彼の酒瓶を取り上げて、自分もそれを口に含んだ。
「なんでだ?」
ロカは、気だるそうに口を開くと、酒瓶を取り返して、目の前の小柄な男をじろりと睨んだ。