国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

夏も終わりになろうかというのに、暑さが和らぐどころか、夜になってもいっこうに気温が下がらない。

朝から続いた重臣会議では、日照りが続き、各地の川や池が干上がっているとの報告が相次いだ。


20年ほど前に起こった凶作の年と、同じような天候だと、重臣の一人が述べると、

周囲の者たちも口々にそう言えばそうだ、と騒ぎ出した。



・・俺の生まれた年、か。



マルスは、もちろんその年がどんな酷い年だったかの記憶はないが、

時おり、侍女たちが、こっそりと、当時の噂話をしているのを耳にすることはあった。


『マルス様が生まれたのが凶作の原因だった』


頭の回転が速いマルスは、それが何のことかはわからなくても、

自分が疎まれているのだということは、なんとなく理解できた。


幼いマルスには、まだおべっかを使う必要がないと思ったのか、

それとも意味がわからないからと、たかをくくっていたのか、

いつもは警戒心の強い彼女たちも、彼といるときは、意外に口が軽かった。





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