国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
深夜に降り始めた雨は、早朝になってもやむ気配を見せず、刺すように冷たい。
氷雨(ひさめ)だな。
王宮の見張り台に立っていた男は、外套を着込んでもなお、寒気を覚えて、
こんな日に寝ずの番に当たった、自分の運の悪さを嘆いた。
もうすぐ、見張りの交代の時刻だ。
男は、冷たく冷えた指をこすり合わせて、そこに息を吐いた。
・・ん?
なんだ、あの黒煙は?
男は、かすかに、空へとたなびく黒い煙を目撃した。
どこかで、火事でもおきたのだろうか。
王宮からは、だいぶ離れてはいるが。
上司に報告すべきかと思ったが、こんな早朝から起こせば、機嫌が悪くなるに決まっている。
この雨だ。
火事だとしても、すぐに消えるだろう。
そう考えて、男は、大きなあくびをした。
しかし、男の予想に反して、その煙は、消えるどころか本数を増やしていく。
すでに煙があちらこちらから立ち上る段になって、
男はようやく事の重大さに気付いた--。