国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
しばらくぼんやりと、長いすに横になっていたマルスは、
ふと、頬に柔らかな風を感じた。
窓は開け放したままだ。
多分そこから、風が入ってきたのだろう。
ひんやりとしたその温度が、今の自分には心地よかった。
だが、風邪をひいてしまうな。
そう思って、マルスは自嘲した。
明日、民衆に八つ裂きにされるかもしれないというのに、
風邪を引いたから、どうだっていうんだ。
王宮には、誰一人残らなかった。
自分に恭しく頭を下げ、敬っていた連中も、結局は誰一人自分の味方ではなかった。
反乱を鎮圧しようと、駆けつけてくる地方官もいない。
むしろ、皆、自分を排除したくて堪らないのだ。
王宮から逃げ遅れた兵士たちだって、いつ自分に牙をむくかもしれない。
今この時だって、自分の首と引換えに、民衆側に寝返るかもしれないのだ。