国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

ハッと息をのんだまま、マルスは氷付けにされたような心地になった。

と同時に、

胸の奥底から、感じたことのない熱い熱い塊が、マグマのように溶けて流れ出してくる。


レア、


と、口にしたのだと思う。

でも、声になったのかどうかわからない。


目を開ければ、これが幻聴ではないことが確かめられるはずだ。

手を伸ばせば、それが幻覚ではないことが確かめられるはずだ。



・・怖い。



久方ぶりの感情。

いや、初めての感情か?


こんな、残酷な夢を、いまさら神が見せるのは、自分への罰なのだろうか。


頼む、ここにいないでくれ。父と一緒に、うまく脱出していてほしい。

いや、やはりいてほしい。最期に一目だけでも会いたい。


永遠の様に永い時が過ぎた気がした。

だが、確かめずには、いられない。


マルスは、恐る恐る、瞳を開いた。


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