国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
レアは、跪いたまま、頭を下げた。
「申し訳ございません。私のような身分の低いものが、王の妻などと。
ですが、お許しください。妻は夫を支えるものでございます。
苦境にあれば、あるほど、離れるわけには参りません」
「そんな事を言っているのではない!!」
マルスは、レアの前から離れると、すたすたと壁際まで来て、拳でその壁を思い切り叩いた。
ダン、とすさまじい音がして、傍の机に置かれていた水瓶が、ガタンと倒れた。
「くそっ!」
マルスは、歯噛みすると、同じように元来た道を、すたすたと歩いて、レアの足元に膝をつく。
「わかっているのか?ここにいれば、殺されるかも知れないんだぞ!
なんのために、好きでもないあの男に頭を下げて、お前の事を頼んだのか!!」
「まぁ!ロカ様に頭を下げられたのですか?」
「う、あぁ、いや、それは・・・。
いや、今はそんなことはどうでも良いことだ。
俺が言いたいのはだな!」
一体、どう説明すればいいのか。
ここにいるのが、どれほど危険なことなのか。
今にも切れそうな、一本の綱の上を、破滅という終着点に向かって、ひた走っているのだということを。
綱が切れれば、自ら谷底に。
切れなければ、人の手によって、やはり谷底に。
どう転んでも、結果は同じだ。