国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

レアは、跪いたまま、頭を下げた。


「申し訳ございません。私のような身分の低いものが、王の妻などと。

ですが、お許しください。妻は夫を支えるものでございます。

苦境にあれば、あるほど、離れるわけには参りません」


「そんな事を言っているのではない!!」


マルスは、レアの前から離れると、すたすたと壁際まで来て、拳でその壁を思い切り叩いた。

ダン、とすさまじい音がして、傍の机に置かれていた水瓶が、ガタンと倒れた。


「くそっ!」


マルスは、歯噛みすると、同じように元来た道を、すたすたと歩いて、レアの足元に膝をつく。


「わかっているのか?ここにいれば、殺されるかも知れないんだぞ!

なんのために、好きでもないあの男に頭を下げて、お前の事を頼んだのか!!」


「まぁ!ロカ様に頭を下げられたのですか?」


「う、あぁ、いや、それは・・・。

いや、今はそんなことはどうでも良いことだ。

俺が言いたいのはだな!」


一体、どう説明すればいいのか。

ここにいるのが、どれほど危険なことなのか。

今にも切れそうな、一本の綱の上を、破滅という終着点に向かって、ひた走っているのだということを。

綱が切れれば、自ら谷底に。

切れなければ、人の手によって、やはり谷底に。


どう転んでも、結果は同じだ。






< 409 / 522 >

この作品をシェア

pagetop