国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

聞き間違えか?

いや、確かにこの男はそう言った。そして自分にも。


“でかくなったな”


長い前髪が顔にかかってわかりづらいが、

髪の束の間から覗く、その、他人(ひと)を魅了する青い瞳の持ち主は・・・。


「ユピテロカ・・・王」


シギネアの唇から一人の男の名が零れ落ちる。

それは、かつてこの国の王だった男の名前。


「冗談ではない!」


シギネアの言葉に、金縛りが解けたように、突如大声で怒鳴りだしたアニウスは、

首にあてられた剣を、手の甲でぐいと押しのけた。


「今更、何をしに舞い戻った!

ヴェローナを置いて、出て行ったお前が!

お前のような半端者に、このウェスタは、やらぬ!

出て行け!!」


立ち上がりかけて、酔いが回ったのか、アニウスは、どすんと尻餅をついた。


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