国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

シギネアは、錆びた鉄のように、動きの鈍い足を必死に動かして、部屋の隅にやってきた。

壁にぴたりと背中をつける。


逃げるためには、二人の剣の間を、すり抜けていかなければならない。

震える足では、それは無理そうだった。

声を上げれば、誰か来るのかもしれないが、それが父のために良いことかどうかもわからない。

なにせ、相手は、前王だ。

例え、狂王と評された人物でも、王は王。

下手をすれば、アニウスの方が不利になりかねない。


それに・・・・。



・・一体この二人は、何を話しているの?

約束って、何?



シギネアは、ガチガチと絶え間なく音をたてる自分の歯に、持っていた手ぬぐいを挟んだ。



・・お父様が勝つわ。そうよ。

あんな、浮浪者のような男に、負けたりしないわ。







< 417 / 522 >

この作品をシェア

pagetop