国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
シギネアは、錆びた鉄のように、動きの鈍い足を必死に動かして、部屋の隅にやってきた。
壁にぴたりと背中をつける。
逃げるためには、二人の剣の間を、すり抜けていかなければならない。
震える足では、それは無理そうだった。
声を上げれば、誰か来るのかもしれないが、それが父のために良いことかどうかもわからない。
なにせ、相手は、前王だ。
例え、狂王と評された人物でも、王は王。
下手をすれば、アニウスの方が不利になりかねない。
それに・・・・。
・・一体この二人は、何を話しているの?
約束って、何?
シギネアは、ガチガチと絶え間なく音をたてる自分の歯に、持っていた手ぬぐいを挟んだ。
・・お父様が勝つわ。そうよ。
あんな、浮浪者のような男に、負けたりしないわ。