国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

睨みあったまま、どちらも動こうとはしない。

重苦しい空気が、シギネアの肌にどろりと纏わりつく。



・・怖い。

こんな怖いお父様、見たことがないわ。



シギネアは腰が抜けそうになり、よろよろと傍の机に手をついた。

その瞬間、どちらともなく駆け寄ると、ガキィン、と鈍い音が響いた。


合わさった剣の隙間から、二人の男の、獣のような殺気を含んだ目が、見え隠れする。


「何が約束だ!

ヴェローナの敵だ。死ね!」


「5年前よりも、格段に太ったな。運動不足は相変わらずか?」


アニウスの剣を力ずくで押さえ込み、ねじるように跳ね上げた。

キンと高い音がしたかと思うと、一瞬でアニウスの剣は宙を舞い、床にぐさりと突き刺さった。


「さらばだ、アニウス」


ロカの剣が、アニウスの首元をとらえる。



・・あぁ、お父様!!



シギネアが心の中で絶叫するのと同時に、扉が勢いよく開け放たれた。


「ロカさん、大変なの!!レア様が!!」


それは、ニュクスたちとともに逃げたはずの、マリカだった。






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