国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
とたんに、石造りの通路は、ディスコルディアの大声が反響して、音の洪水になり、
ラウススは、反射的に耳をふさいだ。
「ずるいわよぉ!
なんで?どうしてあの子ばっかりが、皆に好かれるの?
兄様も、あんたも!ウルウ様だって、あの子の味方をするんだわ!
私のほうが、ずっと美人で身分も高いのに!
どうしてよぉ~!!」
嫉妬なんて、格好悪いから、絶対に言わないつもりだった。
自分の醜い部分を、誰かに知られるなんて、耐えられなかった。
しかし、いったん口にすると、心に溜まっていたものが、
堰を切ったように、一気にあふれ出し、止まらなくなった。
「ディスコルディア・・・」
ニュクスが驚いたように、目を丸くした。
まさか、自分の娘が、そんなにも兄の事を慕っていたなんて。
今、このとき、猛省した。
マルスがディスコルディアを愛していないことは、はっきりしていた。
だから、彼女が傷つかないように、わざと距離を置かせてきた。
マルスの方も、そんな自分の気持ちを汲み取って、ディスコルディアには、あくまで妹として接してくれた。
決して期待を持たせないように。
しばらくすれば、忘れるだろう。ようは、風邪をひいたようなものだ。
熱が醒めれば、けろっとしているはずだ。
勝手にそう思い込んでいた。
しかし、ディスコルディアにすれば、中途半端な位置のまま、はっきりと失恋することもできず、
ニュクスに相談することもできず、一人、胸を痛めていたのだ。