国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
手燭の炎は、とうに燃え尽きて、漆黒の闇に沈んだ王の居室。
・・まるで、雨夜(あまよ)の月だな。
レアが立ち去った部屋で、マルスは、酒をあおった。
酒を飲むなど、いつぶりだろうか。
レアと会うまでは、毎日浴びるほど飲んでいたのに。
人間は、集中することがあると、快楽に溺れる事を忘れてしまうらしい。
マルスは、レアのいた空間を、ぼんやりと見つめていた。
抱く事を想像できても、そうすることはできない。
目の前にいても、触れることすらできないなら、いないと同じことだった。
未練。
明日、民衆に袋叩きにされるかもしれないのだから、
やはり、抱きしめておくべきだった。
マルスは、自分がこんな女々しい男だとは、思ってもみなかった。
死を前にして、いまさら、新しい自分を発見したことが、妙におかしかった。