国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
マルスが長いすで杯を握ったまま、舟をこぎ始めた頃、
突然、扉が乱暴に開かれたかと思うと、疾風(はやて)のように、黒い影が現れた。
「マルス王!大変です!すぐにおいでを!」
そう言って駆け込んできたのは、王の護衛兵であるホーエンだった。
「なっ!どうしてお前がここにいる!
レアやニュクスを守って、一緒に逃げろと命じたはずだろう!!」
マルスは、レアに続き、いるはずのない人間の登場に、苛立ちを隠せなかった。
どうして、皆、俺の気持ちをわかろうとしないのだ。
「申し訳ございません。ですが、私は、あなたの兵士です。
あなたを守るのが任務。最後まで、お傍を離れるつもりはございません」
マルスの怒りが爆発する前に、ホーエンが早口でまくしたてた。
「それよりも、レア様が、大変でございます!」
「レアだと?!」
「民衆の前に、」
ホーエンの言葉を最後まで待たず、マルスは部屋を飛び出した。