国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

マルスが長いすで杯を握ったまま、舟をこぎ始めた頃、

突然、扉が乱暴に開かれたかと思うと、疾風(はやて)のように、黒い影が現れた。


「マルス王!大変です!すぐにおいでを!」


そう言って駆け込んできたのは、王の護衛兵であるホーエンだった。


「なっ!どうしてお前がここにいる!

レアやニュクスを守って、一緒に逃げろと命じたはずだろう!!」


マルスは、レアに続き、いるはずのない人間の登場に、苛立ちを隠せなかった。


どうして、皆、俺の気持ちをわかろうとしないのだ。


「申し訳ございません。ですが、私は、あなたの兵士です。

あなたを守るのが任務。最後まで、お傍を離れるつもりはございません」


マルスの怒りが爆発する前に、ホーエンが早口でまくしたてた。


「それよりも、レア様が、大変でございます!」


「レアだと?!」


「民衆の前に、」


ホーエンの言葉を最後まで待たず、マルスは部屋を飛び出した。


< 431 / 522 >

この作品をシェア

pagetop