国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
ニュクスたちが、王宮の前に到着したとき、すでにそこは、“そういう状態”だった。
大勢の民衆や、兵士たちが、誰一人、身じろぎもせず、ただ一点を見つめている。
あるものは、忘我の境を彷徨っているようであり、あるものは、恍惚の表情を浮かべて涙している。
異様な風景。
・・一体何があったの?
ニュクスがラウススを呼びに行った時には、こんなことにはなっていなかった。
少し前、ニュクスがこの場所に来たとき、そこは、罵詈雑言の飛び交う、酷い有様だった。
皆、手に手に石を持ち、石塀の上に立つ一人の少女に向かって、憎しみを込めて投げつけていたのだ。
そう、レアに向かって。
・・そうだわ、レアさんは?
まさか、殺されたのでは。
ニュクスが視線をめぐらせると、石塀の上に、黒い人影が見えた。
遠くて良くわからないが、おそらくはあれがレアなのだろう。
「レア!」
小さく叫んだラウススが、王宮へ近づこうとするのを、ニュクスはなんとか押しとどめた。