国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
部屋の中は薄明るく、時々、ふっと月が顔を出しては、二人の顔を明るくしていった。
「それにしても、なぜ、創世記を語ることになったんだ?」
「あぁ、それはですね」
レアは、おかしそうに笑うと、声を潜めて、マルスに耳打ちした。
「私が、本当にレアかどうかを確かめるためだそうです」
マルスの、よくわからないと言う顔を見て、レアは、面白そうに微笑んだ。
「私が、偽者だと思われたんですわ。本物なら、創世記を語れるはずだ、語ってみろと言われて」
なるほど、とマルスは頷いた。磔にされるとわかっていて、自ら名乗る者など、普通はいない。
「その者に感謝だな。おかげで、助かった。まだ、気は抜けないがな」
レアの笑顔につられて、マルスも優しい笑みを浮かべる。
お互い、至近距離で微笑みあった後、ふと、レアの顔から全ての表情が消え去った。
「マルス様。
実は、お願いがあるのですが」
珍しい、とマルスは思った。
レアの方から、積極的に頼みごとなど。きっと他人のための頼みなのだろうが。
「俺にできることなら、なんでもかなえてやろう」
マルスは、本気だった。
天と地がひっくり返っても、レアが、そんな事を言うなど、ありえなかったから。