国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

四方を格子に囲まれた、冷たい床の上で、父と娘は、うなだれて座っていた。

遠くからだんだんと近づいて来た足音が、目の前で止まり、アニウスは顔を上げた。

見慣れた、陽気な義弟の顔。


「よぉ、大丈夫かぁ?アニウス」


「あいかわらず、うるさい男だ」


アニウスは、しわの目立つ額に、もう一本しわを増やした。


「なぁ、お前、なんで抵抗しなかった?」


ロカの言葉に、憔悴しきったシギネアが顔を上げた。

そう、アニウスは、まったく抵抗しなかった。

兵士の中には、アニウスの子飼いの者も大勢いる。

アニウスが本気なら、あの場を混乱に陥れることなど、造作もなかったはずだった。


「お前に話す気はない。出て行け」


昨日までとは、明らかに違うアニウスの瞳の色を見て、

ロカは、それ以上何も聞かずに、牢を後にした。


「じゃあな、アニウス。

もしまた、お前が、周囲を省みない臣になったときは、俺が殺しに来てやるよ」



< 454 / 522 >

この作品をシェア

pagetop