国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
四方を格子に囲まれた、冷たい床の上で、父と娘は、うなだれて座っていた。
遠くからだんだんと近づいて来た足音が、目の前で止まり、アニウスは顔を上げた。
見慣れた、陽気な義弟の顔。
「よぉ、大丈夫かぁ?アニウス」
「あいかわらず、うるさい男だ」
アニウスは、しわの目立つ額に、もう一本しわを増やした。
「なぁ、お前、なんで抵抗しなかった?」
ロカの言葉に、憔悴しきったシギネアが顔を上げた。
そう、アニウスは、まったく抵抗しなかった。
兵士の中には、アニウスの子飼いの者も大勢いる。
アニウスが本気なら、あの場を混乱に陥れることなど、造作もなかったはずだった。
「お前に話す気はない。出て行け」
昨日までとは、明らかに違うアニウスの瞳の色を見て、
ロカは、それ以上何も聞かずに、牢を後にした。
「じゃあな、アニウス。
もしまた、お前が、周囲を省みない臣になったときは、俺が殺しに来てやるよ」