国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

再び、牢の中は、静寂に包まれた。


「お父様、ユピテロカ王とのお約束って、なんなのですか?

どうして、約束のために、お父様を殺そうとするのです?」


アニウスは、昔を懐かしむように瞳を閉じると、体をそっと壁に預けた。

重い口を開いたのは、それから少ししてのことだった。


「もしも、私が、堕落した臣になったときは。

そのときは、私を切ってくれと、そう頼んだのだよ」


「えっ?だって、お父様は」


言いかけて、シギネアは口をつぐんだ。

彼女にも、正邪の判断基準くらいはある。

それが世間一般と同じかはわからないが、

自分の父が、くだらない正義感などを振りかざしていないことくらい承知していた。

そのために、アニウスが、時にうらまれたり、悪口を言われたりしていることも。


しかし、それは、シギネアにとっては、弱いもの、力のないものの、妬みや中傷でしかなかった。

世の中は、弱肉強食なのだ。みな、自分が幸せになりたくて奔走する。

その論理が理解できないものは、強いものの庇護で自分を殺して生きていくか、

それが嫌なら、底辺で踏み潰されて生きていくしかないのだ。


アニウスは、そういう意味では、自分の欲望に忠実だった。

そしてまた、シギネアも、そういう生き方を尊敬していた。


貧乏が嫌なら、底辺で這い蹲って生きるのが辛いなら、

どんな手を使っても、他人を蹴落として、陽のあたる場所へと這い上がるべきなのだ。



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