国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
「さようなら。
マルス様」
女は、一度だけ王宮を振り返った。
瞳に焼き付けて、決して忘れないように。
愛された記憶を胸に、今からは、たった一人で生きていく。
・・大丈夫。生きていけるわ。
意を決したように、女は、井戸の中へと足を進めた。
一瞬、台風のように強い風が通り抜け、木々が大きくざわめいた。
この日から、ウェスタ国で、彼女の姿を見るものは、いなくなった--。