国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
「本当に、追わなくていいのですか?今ならまだ間に合いますよ」
窓から空を眺めているマルスに向かって、ニュクスは声をかけた。
冬を暗示するような冷たい風が、ニュクスの長い髪をなびかせ、彼女は髪をなでつけた。
「二度と、会えないかもしれませんよ?
一緒についていったあの人は、連絡もよこさないような人だし」
マルスの背は、幾分か寂しそうにも見えたが、振り返った彼は穏やかに笑っていた。
「今とめれば、彼女が傷つくだけです。俺は、レアをかごの鳥にしたいわけではないですから」
それに、とマルスは、少し間を置いてから、よくとおる声で続けた。
「必ず迎えにいきます。
この国をもっと良くして、飢えるものも、争うものもないようにして。
俺が王を降りても、他国に侵略されないくらい、素晴らしい国にして。
それから、胸を張って、必ず迎えにいきます。
彼女は、俺のものだ」
・・まぁ、すっかり男の顔になって。
ニュクスは、いつも以上に口角を上げて、蕩けるような瞳で微笑んだ。
「なんです?ニュクス」
「いえ、あなたのお母様が生きておいでなら、
きっとあなたを誇らしく思っただろう、と思ってね」
「よしてください。怠けてた俺を見て、泣いてますよ」
照れたような困った顔のマルスを見て、ニュクスの笑顔が倍増しになった。