魔女と魔獣
ふざけた名前のその店の
オーナーは

(株)小笠原グループ

といって、最近急成長の会社で
不動産業や外食産業に
幅広く成功してるらしい。


両親が話を聞きにいったが
相手にされなかった。
「悔しい」
いつも明るい母が泣く。


祖母は
「覚悟しなきゃね。
おじいちゃん許してね。」
そう言って仏壇に手を合わせる。


父は黙って
店の掃除をした。


「マサ代はさ、小さい頃
いつもここに座って
煙がボーボーする中で勉強したり
本を読んだりしてたんだ。
うっかり寝てしまうと
肉くさいまま学校に行って
からかわれてさ
うちくさいって馬鹿にされたって
泣くんだ。
あだ名もラム肉ってつけられたな。
でも小さい声で言うんだ。
私、この匂いが大好きなのに…って」


父の声がかすれた。



私はひとりで
その会社に乗り込んでやろうと
計画を立てた。
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