魔女と魔獣
「私が病人になって約束したの。
『これから先は絶対に会いに来ないで』
ってお願いしたわ。
綺麗な思い出だけ
あの人が『愛してる』って言ってくれた
私だけを覚えていてと・・・・。

それからマーくんのこと
あの子は不幸な境遇ですっかり
心を閉ざしてしまった。
私の愛する人を憎み
自分の現実が許せなかった。
あの人が援助をする
学業に甘えたくないって
中学まで勉強もよくできて将来が楽しみだった
私はいつもあの人と
話合ってきた。



病気がとてもお金がかかると
わかって あの人が
『おまえの治療費を全額出してやるから
その代りおまえは俺の言うことを聞く』
そうやって言えば
言うこときくんじゃないか?って…」



母親の目から
涙があふれ出た。


「かわいそうなあの人は
私とマーくんのために
悪者を演じきってるの・・・・
あの子の将来に道をつける。
大事な私との子供だから・・・
そして自分の会社をマーくんに
継がせたいって・・・・・
あの人は悲しい役目を
マーくんのために背負ってる。」

私は母親にハンカチを
渡した。
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