魔女と魔獣
「自分の愛した人との子供に
責任を持って下さい。
あなたが家庭のほかに
もうひとつ家庭を作ったことで
どれだけの人が苦しんで
生きてきたんですか?
和重もある意味犠牲者です。
父親の愛情を二人とも
知らない。
お金だけが幸せじゃないわ。
ギリギリでも父親の誇りを持って
働く姿を子供は見ている。
悩んだとき
静かに影で一緒に悩んでる。
うちの父はそうです。
言葉は足りなくても
父の愛も母の愛も
私には感じれます。
あなたは二人にとって
もっと父親になってあげて下さい。
わけへだてなく
兄弟となってしまった
あなたの二人の息子のために
あなたの背中を見せてあげてください。
和重は憎いけど
彼の心の痛みは
理解できます……
訴えるつもりはないです。
ただ、二度と会いたくないだけ。」


その間
おっさんはずっと床に顔を
こすりつけていた。


「マジュを連れていかないで。」


「今は治療が大事だから。」

私は向こう側に
人の気配を感じていた。


「あなたが和重をしっかり
愛してあげたら
きっと彼は救われます。」


おっさんは立ち上がり
深く頭を下げて
病室から出て行った。

だぶん和重も……
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