ないものねだり
「えーっと…サキちゃん。」
「はい。」
「あぁ、そんな緊張しなくていいよ。採って喰ったりはしないから。」
やわらかに笑う、男。
「………ですか?食べられるかと思って。」
「何だ。交わすの巧いなぁ!」
さっきとは違う、豪快な笑いの男。
「はじめまして。
主任の須藤です。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
男は、スーツの内ポケットから名刺を取出し、私に片手で差し出した。
「あぁ、どぉーも。」