さっちゃん
「二人のお葬式とかは、先生と同じクラスの人だけに出席させたんだって。私は、先輩のときに連絡が来てそんときに、いろいろ聞いたんだよ」
奏は、長いスプーンを振り回しながら言った。
私は、口を開かずに奏の目を見続けた。
「藤澤先輩、“着うた”が流れてから、ずっと“さっちゃん”の唄を口ずさんでいたんだって」
「ずっと?」
私は、少し目を見開いて奏を見た。
「うん。先輩達の知ってる範囲ではね」
「湊 結名も…?」
「うん」
奏は、机の上に置いてある携帯に目を向けた。
「私ね、先輩のこと聴いて初めて携帯のこと“怖い”って思った」
私は、自分の鞄の中から少しだけ見えている携帯を見た。
「……」
「……なんてねっ!私、携帯異存症だもん♪」
奏の笑顔には、無理があった。
ほんとは、怖くて怖くて……
奏っ
「ごめんね」
「え?何が?」
奏はキョトンとした顔で、私を見た。
「何でもないっ♪」