さっちゃん
葵の携帯が、“着うた事件捜査本部”の部屋に鳴り響く。
「はい?」
「姉ちゃんっ?」
電話口の茜の慌てた様子が、手にとるように分かる。
「どした?」
「“さっちゃん”のことっ!姉ちゃんに聞きたくて」
「何?」
葵は、ポケットから手帳を出した。
「港 結名のこと……」
ま行の欄にある、“港”という名字を指で探した。
「港……、港……。あっ!あった。何、茜の友達?」
「えっ?あー……、うん、まぁねっ」
葵は、茜の曖昧な返事に不審に思いながら、“港 結名”について調べたことを読んだ。
「ふーん?港 結名、平成十九年七月十九日、心不全により死亡。港 結名の友人によると、死亡する一週間前に、童謡“さっちゃん”が携帯から流れた。それ以来、港 結名は常に“さっちゃん”を口ずさんでいた」
「やっぱり……」
茜は、小さく呟いた。
「え?」
「“さっちゃんの着うた事件”で死んだ人、全員、港 結名と同じ死に方でしょ?」
「なっ……んで、知ってるの!!」
葵は、持っていた手帳を落とした。
「あー……、奏から聴いた」