さっちゃん


南が、離れて行ったのを奏が確認すると私に言った。


「告白、しないの?」


「しないよ」


私は、長いスプーンでプリンを頬張りながら答えた。


「何で?」


「私は、今のカンケイが一番好きなの。一番近くに行って、変にドギマギしたり、一番遠くに行って、泣いたりするより、ずっといい」


私は、生クリームを口に運んで言った。


「そっか…」


奏は、小さく笑って木苺を口に入れた。





食べ終わった私達は、レジに向かった。


「みっちゃん、美味しかったよ!」


「“みっちゃん”ゆーなって…」


最後には、怒りというより呆れながら私に言った。


外は、まだ暑かった。


外を歩いているときに、いろんな携帯の着信メロディーが聴こえてきた。


「そーいえばさぁ…」


奏が突然、思い出したように話し出した。


「知ってる?“さっちゃん”の着うた事件」


「着うた?」


私は、奏に問掛けた。


「そ。携帯の着信メロディーに設定してないのに、ある日“さっちゃん”の着うたが携帯から鳴ったんだって」


奏は、人指し指を立てて言った。


< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop