さっちゃん
南が、離れて行ったのを奏が確認すると私に言った。
「告白、しないの?」
「しないよ」
私は、長いスプーンでプリンを頬張りながら答えた。
「何で?」
「私は、今のカンケイが一番好きなの。一番近くに行って、変にドギマギしたり、一番遠くに行って、泣いたりするより、ずっといい」
私は、生クリームを口に運んで言った。
「そっか…」
奏は、小さく笑って木苺を口に入れた。
食べ終わった私達は、レジに向かった。
「みっちゃん、美味しかったよ!」
「“みっちゃん”ゆーなって…」
最後には、怒りというより呆れながら私に言った。
外は、まだ暑かった。
外を歩いているときに、いろんな携帯の着信メロディーが聴こえてきた。
「そーいえばさぁ…」
奏が突然、思い出したように話し出した。
「知ってる?“さっちゃん”の着うた事件」
「着うた?」
私は、奏に問掛けた。
「そ。携帯の着信メロディーに設定してないのに、ある日“さっちゃん”の着うたが携帯から鳴ったんだって」
奏は、人指し指を立てて言った。