さっちゃん
「おはよー…」
私は、眠たい目をこすりながらリビングに降りてきた。
「おはよう、今日は早いのね」
母さんが、朝御飯のベーコンエッグと食パンを用意してくれていた。
「うん、ちょっと…。姉ちゃんは?」
私は、椅子に座りながら聞いた。
「もう、起きてくるんじゃない?」
階段をバタバタと降りてくる音。
「はよー」
「おはよう、時間、大丈夫?」
「うん、余裕ーっ」
煙草を吸いながら、髪を一つに結っている人。
永原 葵【ナガハラ アオイ】。
26歳。
私の、姉。
いちよう、刑事。
「姉ちゃん」
「ん?」
姉ちゃんは、私の隣に座りながら口から煙を出した。
「“さっちゃんの着うた事件”のこと、詳しく知ってる?」
気のせいか、姉ちゃんの表情が一瞬曇った。
「茜も知ってるの?」
「あ、うん。奏に聞いたから」
「そう」
姉ちゃんは、もう一度煙を出して話し出した。
「あたしが、その事件担当してるんだけどね。聞き込みしているうちに、いろいろ分かってきたのよ」
「いろいろ?」
私は、姉ちゃんの目を見た。