さっちゃん
「“さっちゃんの着うた事件”のことぉっ?」
奏が、生クリームを口に入れて聞き返した。
「うん」
「茜、あんたそんなことのために、みっちゃんのカフェに呼び出したの?」
私は、パイナップルパフェの生クリームをスプーンにとりながら、頷いた。
「茜が“おごってくれる”って言った時点で怪しかったけど」
奏は、ため息をついてブルーベリーをスプーンですくった。
「ごめん」
私は、苦笑いしながら謝った。
奏は、“まぁ、いいや”と言って、話し出した。
「実際にね、“さっちゃんの着うた事件”で死んだ子うちの学校でもいるらしいよ」
「えっ?!本当?」
奏は、頷いて続けた。
「二年四組の、湊 結名【ミナト ユイナ】と、三年の藤澤 光沙【フジサワ ミサ】先輩 」
湊 結名。
私、奏と同じ学年の生徒。
結名との接点は特になく、知ってることは“派手な子”ということだけ。
藤澤 光沙。
奏と同じ部活の先輩。
物静かで、簡単にいうと優等生。