メランコリック症候群

Love or Like、勘違い?

あぁ、宏を呼んだ方が良いのだろうか。彼なら喜んで俺の胃に平和をもたらしてくれるだろうに。

たっぷりとクリームの付いたシンプルなイチゴショートを、俺は胸やけを起こしそうになりながら見つめた。100均大好きな母さんが色違いで全員分買い揃えた水玉模様の皿には、本日3つ目のショートケーキが陣取っている。ちびちびとデザートフォークでクリームをつついては舐めとりながら、腐れ甘党の顔ばかりを思い浮かべた。

「姉さん、俺、もう」

「ダメ。正臣は甘いもの食べないし、私はダイエット中。最後の1個でしょ」

あんたは鬼か。

さも当然のように呆れた表情を見せる10歳も年の離れた姉に、軽く泣きそうになった。姉さんこと加奈子姉さんは、菓子作りが趣味で、ひたすら本格的にケーキやら何やらを作るくせに、それらを全くといって良いほど食べない。兄さんも甘いものが嫌いだしで、ホールケーキの5分の3はいつも俺の胃に収められる。

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