メランコリック症候群
「楓も大学生になったら忙しくなるだろうしな。ま、俺は姉ちゃんが結婚するまでは続くと思うよ?」

やけに『結婚』を強調した言い方に、隣の姉さんが放つ雰囲気が一気に絶対零度に達する。満面の笑みを向けながらも、殺意を感じさせるほどに冷たい視線は、兄さんの爽やかな白く光る歯の覗く笑顔に相殺されて、何とも可笑しな空気が流れた。

うん、今確信した。SはSでも、俺は姉さん似だ。

「本当に可愛げがないわね、正臣」

「だから、25の男に可愛げを求めるのがおかしいんだって」

両者一歩も引かない攻防に半ば呆れながら、香りばかりが強調されて美味くも何ともない紅茶を機械的に嚥下した。

見た目はてんでばらばらだが、腹の底は似たような俺達兄弟は、歪ながらも奇跡的なバランスを保ち、今までやってきた。父さんと母さんを入れると、本当に血の繋がりがあるのかというほど似ていないこの家族が、俺にはとても居心地が良い。

どんなにボロボロでもヨレヨレでも捨てられない毛布のような。まあ、つまりはライナスと毛布のようなものだ。俺にとって家族とは、本当の意味で安心できる唯一無二の場所だ。

憂鬱にさせられる原因でありながら、恥ずかしくなるほど縋っている自分に笑えてしまう。

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