メランコリック症候群
壁にもたれて座り込み、瞼を閉じて爽やかすぎる青を遮断した。風が優しく髪を撫で、グラウンドからは体育の授業の声が聞こえてくる。後俺の心の中さえ晴れ晴れしていたら、こんなにも良い天気、どんなに心地よかっただろう。

「……寝るか」

読みかけの小説を顔に掛けて、俺は深く息をついた。眠気は無かったものの、静かに目を閉じていると段々と意識が遠のいていくのがわかった。 微睡みの中で授業の終わりを告げるチャイムが耳にぼんやりと響く。

と、それと同時にガチャリと戸が開き、俺は驚いて肩を震わせて乗せていた本を落としてしまった。何事かと何かのスパイ映画のように壁越しに扉の周辺を確認してみる。心臓がうるさいほどに打ち鳴らされるのが分かった。

「あれ、おかしいな。何で開いてるんだろ」

戸を開けた人物は不思議そうに首を傾げて手元の、恐らく屋上の物であろう鍵を見つめていた。

こいつ、誰だっけ

長い髪とスカートが風に揺れて、ザッと白いサンダルが床を蹴る。緑と白の水玉模様のカチューシャ、カチューシャとお揃いの模様のスカーフ。

確か、この学校のスクールカウンセラー。そう、何やら俺の担任の山下とデキてるんじゃないかっていう噂の。

生憎、全くカウンセリング室に縁がない俺には名前が思い出せなかった。

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