メランコリック症候群
「……わかったよ」

俺が渋々と了解すると美月は本当に嬉しそうに柔らかな笑顔を向けてきた。

あの頃からは性格は勿論、体型やら髪型やらまるで美月 悠里という人間は存在しなかったのではと思ってしまうほどに変わってしまった彼女。

はにかむような笑顔は大人しかった頃の彼女と全く変わっていなくて、何故か安心をする。

「良かったなぁ悠里……!母さん今日はお赤飯炊かないとねっ」

「お母さん!私、私……嬉しい!」

「悠里!」

「お母さん!」

「………」

宏と美月はがしっと強く抱き合って、俺は放置のまま俺の理解の範疇を超えたテンションまで行ってしまわれた。

仕方ない。3日に1回、何とかなるだろ。美月と2人きりじゃなければ。

夫婦漫才を視界に入れたまま、俺は溜め息をつきながら背負ったままだったリュックを机に下ろした。

「おい、勉強しないのか?漫才やり続けるんだったら、俺は帰るぞ」

「やだやだ!やりますやりまーす」

ガタガタと椅子を引いて俺と向かい合わせに座った美月はニッコリと俺に微笑みかけた。



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