メランコリック症候群
「……疲れた」

閉館時刻も既に大幅にまわった7時45分30秒ごろ、警備員に追い出されるように学校を出た俺達は校門で帰路が反対方向の美月と別れて、宏と2人暗い夜道を歩いていた。

「お疲れ様。……もう、なんだか悠里も楓も俺とは次元の違う話するから訳わかんなかった」

宏は肩を竦めてから、持っていた傘をぐるぐると振り回した。

今朝の天気予報では午後から雨になると言っていたのだが、その予報は大幅に外れ空にはうっすらと星が見えていた。

「俺が美月に教えてたのに、いつの間にかお前に2人掛かりで教えてたな」

「わかんないんだよー対数。微積とか別に全然出来ないわけじゃないけどさ、logとか入ったら即お手上げだもん」

「ビビりすぎてるだけだよ。基礎が出来てない訳じゃないんだから」

結局俺が美月に教える事なんて何もなくて、ひたすら2人で彼女が持ってきた難易度の高い問題集を解きまくっただけだった。

途中までは着いてきていた宏が対数を交えた問題になった途端に唸り声をあげ始め、10分と経たないうちにその唸り声はすすり泣きに変わり、あまりの鬱陶しさに集中できなくなった俺は仕方なく宏に解法を説明することにした。

俺が手取り足取り、反吐が出るほどやさし~く丁寧に教えてあげても一向に自力で問題を解けないコイツを見かねて美月も加勢。

そのまま2人掛かりで説明をして小一時間が過ぎ、校舎を見回りに来た鬼警備員に学校を追い出された、という訳だ。

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