メランコリック症候群
「ところで、そんな物知りの宏に質問」

「何?」

「カウンセリング室って、何処にあるんだ?」

そう、誰かに聞こう聞こうと思っていたこと、宏がメランコリック症候群とか言い出したお陰で思い出せた。危うく忘れるところだった。

「楓ー……お前何年俺らの学校の生徒やってるわけー?」

呆れたように苦笑してポンポンと肩を叩かれる。何年居ようが無駄だと判断した事は徹底して頭には入ってこないような脳の構造をしている俺には、3年になっても校舎には知らない部屋がいくつもある。

「はぁー……っとね、北校舎の3階の階段の近くだよ」

「北校舎の3階……。あぁ、生物実験室の近くか」

「そうそう。明日から行くの?」

携帯を開くとちょうど8時と画面に表示された。そろそろ帰らなければ。宏の家族が心配をし始めるだろう。

「サボりたくなったら行くつもり。山下の授業とか」

「そっか」

そう答えると、宏は程々にしとけよとにっこり白い歯を見せて笑ってクルリと向きを変えた。

「じゃあ、また明日!」

「あぁ。お休み」


走り去っていく姿を見えなくなるまで眺めてから小さく息を吐いた。

何か、疲れる1日だったな。
早く帰って風呂に入って、夕飯もすませて勉強をしよう。物理と化学、数字ⅢCに英語に日本史。やる事はまだまだ山積みだ。

グッと気合いを入れ直し、俺は十字路を後にした。

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