メランコリック症候群

お茶会、お茶会、サボタージュ

『メランコリック症候群』と診断をされたあの日から、今日で丸1週間が経つ。

明日から行くだのなんだの帰り際に宏に宣言したものの何となく気恥ずかしくて決心がつかず、カウンセリング室の前まで来ては引き返してを繰り返していた。

……格好悪いな。

今日こそはと教室を出たは良いが、カウンセリング室のドアをノックできず中途半端に腕をあげたまま俺は固まっている。

ドアに掛けられている『open』と筆記体で書かれた木の看板。その下にはテディベアが取り付けられていて、腕には『お悩み相談BOX』なる赤い郵便受けを抱えている。

大きな赤いギンガムチェックのリボンを首に巻いたテディベアはにっこりと口端を上げて俺を見上げてくる。

入らないの?

そうコイツに言われているようで、何となくイラつく。軽く握り上に上げたままの腕はそのままにテディベアを睨みつけてみた。

授業が始まって10分ほどは経つのだろうか。授業が終わればすぐにカウンセリング室の前に来て、休み時間の終わりを告げるチャイムの前には諦めて授業に戻る。そんな事を繰り返していたが、今日は授業に戻るつもりはなかった。

途中から入っていっても相手を納得させられる程の理由も思いつかないし、やおらカウンセリング室に行ってましたなどとバカ正直に言った日には、痛い視線が向けられるのは目に見えている。

授業をサボらなくなった俺を宏が怪しんでカウンセリング室へ行くよう催促をしてくるし、担任の山下が担当の化学に出る気もさらさら無かったし。

……屋上、行くか。

はぁ、と深い溜め息をつき腕を下ろした。テディベアから視線を外し何となく天を仰いでみる。

ドアをノックする勇気すら俺にはないのか。第一、それを『勇気』と呼ぶのかどうかも定かではないが。

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