メランコリック症候群
「……おいおい。お前が俺の事を良く思ってないのは重々承知してるから、もう少し何とかならないのかその無愛想は」

「なりませんね。生まれつきなんで」

そう言った瞬間、前にいた白石に膝小僧を思いっ切り蹴り上げられた。ただでさえ痛いところなのに、全く手加減がない。ヒールの部分がクリーンヒットして、脳天にまで痺れがくる。

「……っ!!!」

「た、高橋君?」

大丈夫?と美月が心配そうに俺の顔と膝を交互に見るのに苦笑いを返して、顔を上げて前にいる白石を見ると怒ったような表情で俺を見ていた。

「……白石先生?」

山下が彼女の突然の行動に驚いて、腰を屈めて頭一つ分低い位置にある彼女の表情を見ようとすると、彼女は瞬時にその怒った顔を対山下用に切り替えた。もしかして、この人の腹の中は俺よりも黒いんじゃないか?

「別に何でもないですよ。高橋君の膝小僧に蚊がとまっていたもので」

「……はぁ」

ニコニコ笑いながら見え透いた嘘をついた白石に、山下は曖昧に返した。一方、美月は何か納得したように頷いていた。嘘に決まってるだろうが、腹の中でだけそう言いながら肘で美月をつついてやる。

「さぁ、もう閉館だから帰れよ」

諄い奴。分かってるよ。


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