メランコリック症候群
今度は蹴られないように喉まで出かかった言葉を飲み込んで、教室を出る。美月が慌てて俺に着いてくる足音が聞こえた。

「あ。ねぇ、美月さん」

背を向けて帰ろうとする俺達を白石が呼び止めた。電気を消されて廊下が暗いせいで、彼女の表情は見えない。白石を残して隣の教室に見回りに行く山下の、翻る白衣ばかりがやけに目につく。

「なぁに、由香里ちゃん」

「アナタ達って付き合ってるの?」

は?何を言ってるんだこの人は。

眉間に皺が寄るのを感じながら、視線だけで美月と白石を交互に見た。暗くても、近い美月の表情ぐらいはよく見える。彼女は何やら嬉しそうに笑っていた。

「そうだよ?」

「おい。違うだろうが」

「えぇー……」

肯定する彼女にすかさずつっこみ、宏の真似をしてピシャリと軽く頭を叩くと、抗議の声を上げられた。



< 50 / 123 >

この作品をシェア

pagetop