メランコリック症候群
「ひぇ~今日はまた、一段と暑いね。むわっと来たよ、今」

彼女は今日は、表のテディベアと同じ様な涼しげな青の水玉模様のスカーフをしている。……暑いのなら、着けなければいいのに。そう思うのは、俺だけか?

「早く入れてください。中、涼しいんですよね」

「あぁ、ごめんごめん」

そう言って入り口から寄ってくれた。1歩踏み出すだけで冷気が夏服で露出した肌を包み込む。一体外は何度あったのだろうか。27度と設定されたエアコンの冷気が鳥肌が立つほど冷たく感じる。

「こんな暑い中外に出るなんて嫌ですよ」

「分かってる分かってる。私も嫌だもん。午後になって日が陰り始めてから行こ」

すっかり俺の定位置になったソファーに腰を下ろすと、冷たいコップを手渡された。なみなみとオレンジジュースが注がれていて、数個の氷が涼しげな音をたてる。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

一口嚥下すると爽やかな甘さのジュースが乾いた喉に心地良く、冷たい物が滑り落ちていく感覚に思わず感嘆の溜め息が漏れ出た。

「今日はお昼、持ってきてる?」

「いえ、持ってきてませんけど。近くのコンビニか何かで買ってこようと思ってます」


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