メランコリック症候群
一昨日久しぶりに休講になった数学の時間を利用して、カウンセリング室に花の世話に行った時に白石に誘われたのだ。それはもう、これ以上なんて無いんじゃないかと思うほどの満面の笑みで。

ねぇ、高橋君。2人で散歩しない?

そう突然言われた時には理解が出来なくて、しばらく口を半開きで停止してしまっていたように思う。

何でこう次から次へと予測不可能な発言をしてくるのか。半ば呆れてはいたが、もう1度同じ台詞を聞いたときには何故だか頷いていた。

今考えても、分からない。何で折角の休日を、散歩なんかのために埋めてしまったのか。あの時の俺は、気が確かだったとは思えない。

校舎を出て、相変わらず陽炎で境界線がぼやけたアスファルトの上を白石と歩く。ハンカチでしきりに滲む汗を押さえながら、彼女はウンザリしたように溜め息を付いている。

「あっつー……。一体何度あるのかなぁ、もう」

「1日中エアコン効いた所に入るから、弛んでるんですよ」

「キミだって、エアコンは教室に付いてるんだから似たようなもんでしょ」

汗をかく事なく歩く俺が恨めしいのか、彼女は口を尖らせて反論してくる。

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