メランコリック症候群
「オシャレなお店だね」

席に着くと店員がメニューとお冷やを置き会釈をして、店の奥へと消えていった。彼女が言う通り、こういう事には疎い男の俺から見ても、女性が好みそうな洒落た内装をしている。外装も赤い屋根と蔦が程よく覆った白い壁が印象的だった。

ピアノの曲が静かに流れ、周りから聞こえてくる話し声や食事をする音も優雅な雰囲気を醸し出している。丁度俺達が着いた時間からが混み時だったらしく、もう何人もレジ付近の椅子に並んで座ってテーブルが空くのを待っている。

「わぁーピザ美味しそう!んー……私はこのシュリンプサラダと、3種のチーズとフレッシュトマトのピザってやつにしようかな」

彼女はメニューを見てキラキラと目を輝かせている。数分間あれこれ悩んだ結果、そう言って笑った。

「……ホットサンド食べるんじゃなかったんですか?」

「あー……じゃあ、高橋君がホットサンド頼んで、半分こしようよ」

「はぁ」

俺だって頼みたい料理があったわけだが、嬉しげな彼女の表情にそんな事は言い出せず、渋々次回にまわす事にした。

俺は、メニューにおすすめと書いてあったホットサンドのセットとレモンティーを頼み、彼女は先ほど言っていたピザとサラダ、それからミックスジュースを店員に注文した。

「ところで、高橋君のお兄さんの名前って何ていうの?私と年もあんまり変わらない感じ?」


< 64 / 123 >

この作品をシェア

pagetop