メランコリック症候群
食べても食べても肉の付かない薄っぺらい体は、俺にとっては1つのコンプレックスだ。この頼りなさげな体型のせいで、風が吹けば倒れてしまいそう、などと女子に言われたこともある。その度に、筋肉は割とついてるんだ、とか何とか言い訳をしながらやり過ごしてきた。

「そう?確かに正臣君もモテてたけど、キミのその容姿もモテる部類でしょ」

「……はぁ、そうですかね」

青いグラスに入れられたお冷やを飲んでから、彼女は俺を見て微笑んだ。氷が涼しげな透明な音を立てる。

「私は、キミの方が好きだよ」

「……」

見た目はね。

ご丁寧にもそう付け足して、彼女はグラスを置いた。何と返して良いかが分からなかった俺は、ただ黙って後ろのテーブルから聞こえてくる女子高生のはしゃいだ会話をぼんやりと聞いていた。

「お待たせいたしました」

10分ほどして料理を運んできた店員を見て目を輝かせながら、彼女は机の上で白魚のような指を踊らせている。


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