メランコリック症候群
ピザとサラダ、それからミックスジュースを彼女の、俺の前にもホットサンドとレモンティーが置いて軽く会釈をすると、店員は店の奥へと消えた。

「ね、早く食べようよ」

お預けをくらった犬のように並べられた料理を凝視していた彼女は、待ちきれない様子でそう言った。……俺の目には、涎を流す犬の様にしか見えない。

「はい」

「じゃあ、いただきまーすっ」

「……いただきます」

丁寧に手を合わせてから嬉々としてピザに手を伸ばす彼女を暫く見つめて、俺もホットサンドを1つ手に取った。格子状に焼き目のついたパンの香ばしい香りが鼻孔を擽る。

切り口から溢れんばかりに詰められている卵の黄色と、横に添えられたピクルスの緑に食欲をそそられ一口食べてみる。口いっぱいに広がる卵の甘さと、パンの香ばしさ。遅れてやってきたマスタードのピリッとした刺激。

真夏でサッパリとした物を求めている舌でも、このタマゴサンドは拒否をしない。シンプルでありながら、洗練されたその味に素直に感動をした。なるほど、人気が出るのも当然だ。男の俺でも毎日来ても良いかな、と思えるほどに素晴らしかった。


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