メランコリック症候群
「へぇ。大人気なんだね。人がたくさんいる」

やはり涼しくなってから見に来ようと考える人は多いらしく、公園は人で溢れかえっていた。気温はうだるような暑さとはいかないが、夕方になっても汗で肌がじっとりと濡れる程度には暑かった。それに加えて、この人口密度。嫌気がさす。

「毎年全国に呼び掛けてるみたいですからね」

赤、黄色、青、白、紫にピンク。公園に所狭しと並べられた煌びやかな花達は、未だ空高くに陣取る太陽に照らされて、きらきらと美しく輝いている。

人とぶつかってしまわないように周りに気を配りながら、歩幅も狭くゆっくりと前へと進んだ。

「ねぇ。この花は何て名前なの?」

彼女は上機嫌に声を弾ませながら、足元の花を指差した。ピンクで豪華な見た目の可愛らしい花。夏から秋にかけての花の中でも、俺の好きな種類だ。

「ジニアですよ。百日草といって、冬頃まで花を咲かせます」

「へぇ。じゃあ、これは?」

今度は1mほど向こうの赤い花を指差した。

人口密度のせいなのか、それとも昼間に散々温められたアスファルトからの熱のせいなのか、それは定かではなかったが肌がじっとりと汗で湿り、少し張り付くカッターシャツが不快だった。しかし、彼女の太陽のようなと比喩したくなる笑顔は、あきれるほどに爽やかだ。


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