メランコリック症候群
「グロキシニアです」
へぇ、と短く返事をして、彼女はクスクスと肩を密かに揺らしながら笑った。何が面白いのか皆目見当がつかなかったが、取りあえず彼女が楽しそうなのは俺にとって少なからず嬉しいことではあるので、大して気にもとめずに俺の方のあたりでひらりひらりと揺れるスカーフを意味もなく見つめてみる。
「じゃあ、あれは?」
笑いの混じった声は歌うように明るい調子で、爽やかだ。その様子は、早朝にさえずる小鳥、あるいは繊細な細工の施された金の鳥かごで歌うカナリアを連想させた。何故かは分からないが、俺が彼女を動物に例えるならば、小鳥なのだ。か弱いイメージではないが。
「あの薄紫の花ですか?」
「そう。あの花」
「あれは、アガパンサス……だったと思います」
その答えに彼女はまた肩を揺らしながら笑った。今度はクスクスどころじゃない。あはは、と何とも愉快そうに笑っている。俺を笑っているのは明確だったので、少しばかり腹が立った。理由も分からず笑われるというのは、断じて良い気分ではない。少なくとも、俺にとっては。
「……さっきから、何なんですか」
「え?あ、あぁごめんね。何だか、面白くって」
だから、何が。
へぇ、と短く返事をして、彼女はクスクスと肩を密かに揺らしながら笑った。何が面白いのか皆目見当がつかなかったが、取りあえず彼女が楽しそうなのは俺にとって少なからず嬉しいことではあるので、大して気にもとめずに俺の方のあたりでひらりひらりと揺れるスカーフを意味もなく見つめてみる。
「じゃあ、あれは?」
笑いの混じった声は歌うように明るい調子で、爽やかだ。その様子は、早朝にさえずる小鳥、あるいは繊細な細工の施された金の鳥かごで歌うカナリアを連想させた。何故かは分からないが、俺が彼女を動物に例えるならば、小鳥なのだ。か弱いイメージではないが。
「あの薄紫の花ですか?」
「そう。あの花」
「あれは、アガパンサス……だったと思います」
その答えに彼女はまた肩を揺らしながら笑った。今度はクスクスどころじゃない。あはは、と何とも愉快そうに笑っている。俺を笑っているのは明確だったので、少しばかり腹が立った。理由も分からず笑われるというのは、断じて良い気分ではない。少なくとも、俺にとっては。
「……さっきから、何なんですか」
「え?あ、あぁごめんね。何だか、面白くって」
だから、何が。