メランコリック症候群
遅くなってしまった。

ソフトクリームを買う前に自動販売機を探していたのだが、なかなか見つからない。ほんのり方向音痴がはいっている俺は、自動販売機を探してあちこちしている間に、目印にしていた屋台を見失い、どこを向いても同じように花と人で埋め尽くされているこの公園で1人途方に暮れていた。

さて、どうしたものか。

やっとのことでコーヒーを買い時計を見ると、もう彼女と別れてから20分も過ぎている。

帰ってこない俺に口をへの字に曲げながら、ソフトクリームの冷たさに思いを馳せ、ベンチでだれている彼女の様子が目に浮かぶようだ。

屋台の側には何があっただろう。洒落た作りの街灯、赤いレンガ造りの手洗い、確か近くで噴水の涼しげな音が聞こえていた。

眉間に皺を寄せながらキョロキョロと辺りを見渡せば、手洗いを示す看板が目に入る。俺の手の中で急速に冷たさを失っていく小さなスチールの缶に焦りを覚えながら、踏み出す足は自然と駆け足になった。




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