メランコリック症候群
やっと購入ができたソフトクリームと、すっかり温くなってしまったコーヒーを手にベンチへ戻ると、脱力し密かに不機嫌なオーラを発しているだろうとの俺の予想は外れ、彼女は誰かと楽しそうに談笑していた。

背の高い、男だ。色素が薄めの焦げ茶の髪を、軽く立たせてある。白いワイシャツを羽織り、色落ちの良さそうな青いジーンズを履いている。

いつもの翻る白衣がなくたってわかる。あれは、山下だ。化学教師兼俺の担任の、白石とできてるとかいう噂の、兎に角嫌いな男。

女子からの人気は絶大だが、男子からは毛嫌いされている。あの男子にとる高圧的な態度や、変にフェミニストで女子に好かれているところも何もかもが気に入らない。主に前者が嫌いな理由だが。

なんで、ここにいるんだ。
どうして、彼女と話してる?

左手に持ったソフトクリームに密かに力が入り、紙越しにコーンが小さく軋みをあげるのが感触でわかった。

湧き上がる悶々としたイライラを、肌に滲む汗と張り付くワイシャツのせいにして、俺は2人に近付いた。



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