メランコリック症候群
なんだと。カウンセリングの一環かなんて、そんなデリカシーの欠片もない質問があるか。プライバシーを保護してこそのカウンセリングだろうが。
山下の言葉に眉を寄せながら、彼女がどう返答するのか耳をすませた。彼女の方も山下の言葉には引っかかるものがあったようで、いつもの笑顔の中に一握りの歪みが感じられる。しかし、その歪みはすぐに最初から無かったかのように、溶けていった。
ちろりとソフトクリームを一口舐め、ふと俺に視線を移す。その流れが余りにも自然で、どきりと心臓が波打つ。
「違いますよ」
彼女の返答に俺の眉間の皺は溶け、山下も興味深そうにその続きを待っている。彼女が俺の目を寸分違わず見つめる。その直ぐな視線に、急に周りの音が聞こえなくなった。
深い海の中に沈み、鼓動だけが頭に響くようだった。