メランコリック症候群
質素な蛍光灯にはシートを被せ落ち着いたオレンジの光に変え、並べた机に上から丸いアクリル板を取り付け無理矢理丸いテーブルにし、趣味の良いレースをあしらったテーブルクロスをかけてある。

椅子も見慣れた木とパイプのそれではなく、喫茶店を営むクラスメートの家からアンティーク風の小洒落たもの借りてきて、呼び鈴の金のベルまでどこかで調達してくる始末。

極めつけには、8種類の紅茶と5種類のサンドイッチに、シンプルなショートケーキをはじめとしチーズケーキ、モンブラン、ミルフィーユ、シュークリームなどなど有り得ないほど充実したメニュー。ちなみに、それらのケーキは宏が指揮って製作中との事だ。腐れ甘党のくせに、手作りのお菓子の甘さは大人向けである。世の中は不可解な事ばかりだ。

「金掛かり過ぎじゃないか?元とれるのかよ」

予算として学校側からおりた1万円で、ここまで本格的に備品やらメニューやらを充実させるのはやはり不可能で、さらに1人につき500円も徴収されたのだ。未だに俺の背後で監視する朝倉に問えば、またもやさも当然のように返される。

「倍にして見せますとも。と言うか、もう元とれてるわ」



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